top of page

「1番が家族 2番が牛 3番目にケーキ」海を求めてたどり着いた知夫

更新日:2020年1月16日

VOL.2 稲澤 義治(いなざわ よしはる)さん、千夏(ちなつ)さん(めにーでーる)



2018年に神戸から移住し今年8月に菓子工房「めにーでーる」をオープンさせた稲澤さんご夫婦。移住のきっかけは海と牛。当初、お菓子作りは頭になかったというが、移住からわずか1年で家の一部を改修し営業許可を取得。スピード感あふれる稲澤ファミリーだが、そこには家族で作った大事なルールがあった。








■農家になろう!から始まった移住先探し



神戸で生活をしていた稲澤さん、都会の「仕事と子育て」のアンバランスな生活に終焉を感じ、第二子の妊娠を機に「家族の時間を作れる暮らし」を探し始めた。







 

とにかく海が良かった。それは夫婦で一致していて色々海沿いを探した。

 


二人とも出身は中国地方。実家からの距離も移住探しのポイントだった。「実家から遠くない」と「海」という2つのキーワード。義治さんは山口県出身。幼いころから海が見える暮らしをしてきた。逆に千夏さんは岡山県でも山に囲まれて育ち、海へのあこがれがあったという。「海で農業」がどこに行けばできるのか?家族は山口から益田、浜田、大田と東へ車を走らせた。「初めは野菜や果物農家を探した。それで移住地が見つかって出産前に引っ越そうって話してて。」

ある時、千夏さんが定期健診に訪れた婦人科で怖い話を聞く。「早産の妊婦さんが運ばれてきたとき先生が、出産前の引越しはやめた方がいいって言ったのにって話をしてて。自分も早産になりそうだったからそれで引越しをとどまった。」引越しのタイミングがずれ出産があったことで移住先は一旦白紙に。一から探そうと大阪でおこなわれたUIターンフェアへ情報収集に行ったときのことだった。知夫村の畜産ブースは人気がなく担当者がさみしそうにしているのを見て何気なく話を聞いてみた。すると大自然の離島で牛を育てるというスケールの大きさに魅力を感じたという。知夫の畜産の取り組みや支援制度の充実など就農までの道筋がわかり易かったことも実際に島を訪れてみようと思うきっかけになった。





 

「海が良かった」と「知夫」が繋がった瞬間

 

二人の出会いは小笠原諸島。東京から片道25時間の船旅でしか行けない南国リゾートのような場所。千夏さんは大阪で培った10年間のパティシエ経験を捨てバックパッカーになろうと「海外に行く前に練習のつもりで小笠原へ行った」という。その時、先に無人島にダムを作るプロジェクトで島に来ていた義治さんと出会うことに。「壮大な自然」と目の前に広がる「海」という離島の出会い。「小笠原と知夫は全然ちがうね。だから繋がりは考えてなかったけど、暮らすイメージはすぐ作れたかな。」小さな島はすべてが近くにあり家族の時間を作るには最適の条件。小笠原諸島の経験があったことが知夫に引き寄せられた理由かもしれない。





■店名「めにーでーる」に込めた想い



2017年の夏に知夫を訪れ翌年2月に移住。足掛かりとして地域おこし協力隊の制度を使い、畜産農家で研修をしながら就農の準備を進めた。近年、畜産農家は若者が増えているが、古くからある農家は高齢化で廃業するケースがあり設備や牛を買い取る機会もある。「良い条件の時に設備を買ったり、牛舎を借りられた。」という義治さん。1年間の研修を終え畜産農家として一人立ちすることができた。

子育てをしながら新しいことに挑戦するのは大変なことだが「近所の人が子供のめんどうを見てくれたり、牛飼いの仲間が助けてくれたりそういう支えが本当にうれしかった。」と二人は口をそろえて言う。

英語を直訳すると、めにー(多い)でーる(沢)稲澤家が住む多沢地区をそのまま店名にした。ここで暮らし続けたいという家族の想いが込められている。











■ 製菓を仕事にするなんて考えていなかった


「ここに600何人しかにないのにケーキ屋さんって。みたいな感じで全然視野になかったから。仕事にするなんて頭になかった。ケーキ屋さんって儲からない。食材のロスとか材料が高いとか色々あるよね。」と二人からは起業したとは思えないような言葉が次々と出てくる。もちろん本土のようにフル営業をする場合のことだろう。それでもマイナス要素の多い出店に踏み切った理由は島の人の反応だった。






 

お菓子でこんなに喜んでもらえるなんて

 

島は大手の製パン会社などの作るケーキや菓子パンなどは商店で手に入れることができるが、専門店で買うようなお菓子は本土へ出なければ手に入らない。移住して2ヵ月後に「野だいこん祭り」にシュークリームを出品したのがきっかけだった。

「パティシエなら何かできる?って言われて出したら結構評判がよくて。そのあと、初めて会う人にが、シュークリームの人だねとか声をかけてくれるようになって。」

新しいことがすぐに広まるのも小さな島ならでは。個人的に作ってほしいと依頼をされることが多くなり需要があることが分かった。

「喜んでもらえるのがうれしい。ただ、このままでは仕事にできないからきちんと営業許可を取ろうってことになって。」



改装直後の工房の様子


2019年3月に計画がスタートし8月に営業許可を取得。ただ、家族で決めた子育て1番、牛2番、ケーキが3番目という優先順位を守りあくまでもゆる~く。

「正直、お菓子で生活が成り立つ訳じゃないから。ただ今後は商品開発をして島のお土産や特産品を作って仕事を広げていきたい。」

昔から食材をみるとこれで何ができるか?と考えてしまうのはパティシエの職業病だという。そして二人はオリジナル商品の話題になると意気揚々と話をしてくれた。






 

「最強アイス」

 

同じ地区の民泊でおこなわれた「うちカフェ」の様子 下は来場者に振舞ったふくぎアイス


実はすでにさまざまなアイディアを形にしている千夏さん。今年の夏に同じ地区にある民泊孤島でおこなわれたカフェイベントでふくぎ(クロモジ)のフレーバーアイスを来場者にふるまった。アイスは2.3種類のフレーバーを作っておけば冬でも売れるため島外を含めさまざまな販路が期待できる。そして商品のキャッチコピーは3才の息子さんがハマっている「最強!」という言葉。「アイスになるかは別として、お土産で会社用、友達用、とちょっとおもしろい最強のやつ。あいつに買って帰ってやるか!くらいの。」そんな商品を作れたらおもろしいと楽しそうに話してくれた。








そんな稲澤さん夫婦が“知夫村を一言で表すとしたら”





「ノンストレス」





知夫の暮らしはストレスがないと言い切る稲澤さん。もちろん離島ならではの不便さはある。しかし家族の距離が近く同じ時間を過ごせることがストレスの生まれない一番の秘訣だろう。雄大な自然が与えてくれる暮らしから新たな名産品が生まれる日はそう遠くなさそうだ。





めにーでーる


お菓子、お土産品などの製造販売

2019.11作成のメニューはこちら

営業時間 9:00~16:00

定休日  不定期

住所:知夫村多沢575番地

予約受付方法

電話:080-7752-2620

LINEからも予約可


bottom of page